ベアトリーチェに関して 1
-----バスカーコロニーにて
[シェーン]
「ありがとうございます。
もう平気です…
[ヴァージニア]
「――お父さん…
「お父さんが追いかけているのって、何なの…?
あの少女が関係している事なの?
やっぱりわたしは、立ち入れないのかな…?
[クライヴ]
「僕たちが、世界の荒廃について、
ユグドラシルシステムに辿り着いた時…
「あなたはもっと深い闇を、
ユグドラシルの向こうに
覗いていたのではありませんか?
「教えてください…
ユグドラシルシステム暴走の裏には、
いったい、何が隠されているのですか…?
[ウェルナー]
「――あれは…
「ユグドラシルの暴走は事故ではない…
悪意をもって引き起こされた、
災厄に他ならない…
「悲劇は、彼と同じように、
七人委員会の同志のひとりが、
心を魔族に巣食われたところから始まったのだ。
[ヴァージニア]
「――心を…
――魔族に…?
[ウェルナー]
「制御管理官、デュランの夢に現れた夢魔…
「ベアトリーチェは、
助言のカタチで彼を導き、
やがて、その支配下においたのだ。
[ヴァージニア]
「ベアトリーチェ…
それが、あの少女の名前なのね…
[ウェルナー]
「情報ライブラリィ【ヒアデス】の中に
潜んでいたベアトリーチェは、
自身が、電気信号体であることを利用し…
「同様に、電気信号が構成する、
人の心…、夢の中に接触してきたのだ。
「それが、同志デュランであり、
彼であり――
いや、被害者はこれだけでは済まないだろう…
「………
「…夢魔は、その特異な構成故、
現実世界に影響を及ぼす事は僅かだ。
だが、夢を見せることで、人の心を操作できる。
「そうする事で、直接的な介入をせずとも、
現実世界に、手を伸ばしてきたのだ。
[シェーン]
「ボクの夢見は、夢の中の君――
いいえ、夢魔ベアトリーチェによって、
意図的に与えられていた情報だったのですね…
[ウェルナー]
「教えてもらえないか?
ベアトリーチェが何を望み、
何を行なおうとしているのか…?
「10年前のユグドラシル暴走は、
いったい、何を求めて引き起こされたのか?
[シェーン]
「…すみません…
「ベアトリーチェがボクに視せた夢は、
その大半が【蒼の脅威】についてなのです。
「今から思うと、ジークフリードと、
そこに連なる預言者たちを、
予め告げていたのだとわかるのですが…
[ギャロウズ]
「…ってことはよ…
同じ魔族なのに、ベアトリーチェは、
ジークフリードに手を貸さなかった…
「それだけじゃない。
シェーンに伝えることで、
奴等の計画を邪魔したというわけか…
[クライヴ]
「利害が一致しなかった…?
「それとも、ジークフリードが、
ファルガイアを理想郷化(テラフォーミング)することによって、
彼女の思惑に何らかの障害が生じるとか…?
[ウェルナー]
「…何にせよ、
私はこの星にとって危険な智慧をもたらす、
【ヒアデス】を封印しようと考えている。
「ファルガイアは、
ファルガイアに生きる生命、みんなの星だ。
「これ以上、
魔族の智慧と力に傷つけられる事の無いよう、
封印すべきである――
[クライヴ]
「――ちょ、ちょっと、待ってくださいッ!
「たしかに――
情報ライブラリィ【ヒアデス】によって、
この星は多大な被害を受けてきました。
「【ヒアデス】の力は強大なモノ…
ですが、力そのものに善悪は無いはずです。
有効利用する事だって、あるいは…
「【ヒアデス】の智慧によって傷つけられた世界は、
【ヒアデス】の智慧によって、
早急に修復されるべきではないでしょうか?
「すみません。
…らしくなく、
ちょっと熱くなってしまいました…
「…僕は…、僕と先生は、
かつて、ファルガイアの【想い出】を
辿ってきた研究者でした…
「…だからでしょうか…
その…、【ヒアデス】を…
貴重な遺産を封印することに抵抗を感じるのです…
[ギャロウズ]
「――こ、こいつは…、何かヤバイぜッ!
お前も感じるか、シェーン?
[シェーン]
「ここから…
南東の方角…、半島の位置…?
「そこから、禍々しい力を感じます。
…魔族を思わせる、
それでいてずっと大きな――
[ウェルナー]
「ベアトリーチェめ…
こうも大胆に事を起こすか…ッ!
「もはや、人の心の闇に、
隠れ潜む必要が無くなったのかッ!?
「…お前たちは、
この衝撃の正体をつきとめてくれ!
「わたしはやはり、
【ヒアデス】を止めねばならない!
それは、私に課せられた、贖罪だッ!!
[ヴァージニア]
「わたしたちも、急ごうッ!!
--背塔魔界柱出現
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