アーメンガード

-----6月1日

「6月1日、今日は電波の日~。

「電波をキャッチし大切に保護しなくてはいけない日。
 隣近所に怒られようと、
 煮干しと米でお接待してさしあげるべき日なのです。

-----6月2日

「6月2日、今日はネジの日~。

「頭のネジをひねるイメージ→
 脳内麻薬物質の調節が可能に…という、
 催眠ネジ師の一人目が現われた日だ。

「わたしも一時は、催眠ネジ師になってみたかったが、
 向いていないのだろうか、いくらやっても
 覚えた記念日が溢れ出してくるばかりだった。

-----6月3日

「6月3日、今日は井戸の日~。

「井戸というものは、
 人の心の深淵を暗喩するもの。

「だからわたしは、自分の心に深く潜り込み、
 心の表層に波紋を起こす
 潮流を知ろうと思うのだ。

「それはきっと、
 他の人の顔に表れた【心の表層】から、
 彼らの深部を知ることにも繋がることだろう。

-----6月4日

「今日は6月4日、今日は虫の日~。

「クモやムカデも虫っぽいが、
 胸部から六本の足が出ていないので、
 彼らは昆虫とは認められないのだそうだ。

「秘密結社の会員資格のようなふるいによって、
 虫ではないものとして無視させる…
 彼らの気持ちはいかばかりか。

-----6月5日

「今日は6月5日、霧の日~。

「霧というのは恐ろしい、
 霧の精霊が中にいても、
 さっぱり分からなくなるからだ。

「砂海というのは恐ろしい、
 砂の精霊が溶けていても、
 さっぱりわからなくなるからだ。

「空というのも恐ろしい、
 空気の精霊が漂っていても、
 さっぱり分からなくなるからだ。

「…こう考えると、
 霧の恐ろしさを訴える目的で、制定された今日は、
 あまり意味がないな。

-----6月6日

「6月6日、今日は戦僧アルニムの日~。

「魔族との戦いに従軍していた僧侶アルニムは、
 果てしなく続くいがみあいに疲れ、
 何百年か前の今日、脱走した。

「だが当然、脱走兵アルニムは追跡され、
 ある小高い丘で処刑された。
 そして、何年後か…

「アルニムの死体を埋めたところに、
 一輪の白い花が咲いたという。
 その花は、どんな状態の病人も治したという。

-----6月7日

「6月7日、今日はヒールベリーの日~。

「ヒールベリーの別名は【ダメポン】。
 受けたダメージが、
 ポンと飛ぶことから来ているのだ。

-----6月8日

「今日は6月8日、なまこの日~。

「巨大なまこをなますぎりにした勇者と、
 輪切ったなまこを、なまのままぱくりと食べた、
 食いしん坊のどちらが勇気があるか?

「この戦いが行われた年から、
 今日はこの命題についてのディスカッションを、
 行う日と定められているのだ。

-----6月9日

「今日は6月9日、本能の日~。

「ノーと言っているじゃない!本当よ!
 という声が、村外れの岩陰から
 聞えてきたことがある。

「きっとあれが本能なのだなぁ。

-----6月10日

「6月10日。
 今日は外宇宙から来たあのお方の日~。

「それは、はいよるこんとん。
 今日は、初めてはいよるこんとんの…

「うっ、これも語ることができぬのか…
 意識が薄くなり申す…

-----6月11日

「6月11日、今日は猿人の日~。

「エンジンを探せ、
 とご主人様に仰せつかったメイドは、
 頑張って猿人を探してきた。

「ほんとうに猿人がいたのだと
 驚いたご主人様によって、
 今日は猿人の日と定められたのである。

-----6月12日

「今日は6月12日、ノーブルレッドの日~。

「ノーブルレッドを捕まえようとした男がいた。

「彼はざるにつっかい棒をあてがい、
 その下に置いたビーカーに、己の血液を入れ、
 簡単なトラップを作った。

「皆、そんなのでノーブルレッドを捕まえられる
 わけがないじゃん、と噂した。

「だが、一夜明けたとき、
 ざるの中にはノーブルレッドがかかっていたそうだ。
 …なんでもやってみるべし、という寓話だな。

-----6月13日

「6月13日、今日は悪の日~。

「悪はエビル。
 悪なことをするのはエビります。
 悪なことをしようかなあというのはエビれば。

「…エビが食べたくなってきたな。

-----6月14日

「6月14日、今日はむだ毛の日~。

「上腕部に一本、白い長い毛がたれていた将軍アグイ。
 その毛は三度まで彼の願いを叶えてくれた…

「そして今…
 アグイの毛は、低温保管器におさめられ、
 みんなの厚い信仰を集めている。

-----6月15日

「6月15日、今日は犬の日~。

「犬はいいですよねぇ。
 自分のしっぽを追いかけて、クルクル回ってても、
 カワイイと思ってもらえて。

「わたしもたまに、自分の手首をお尻に当てて、
 クルクル回りたくなるんだけど
 世間様に差し障りがいろいろありましてね。

-----6月16日

「今日は6月16日、
 父の日であることもある日。

「それゆえに父に贈り物をしたりして、
 感謝の意を表す日である。
 間違えて間者を送り込んだりしてはならない。

-----6月17日

「6月17日、今日はうずまきの日~。

「うずまきの中に入ると、上下左右に翻弄され、
 ドキドキするスリルが味わえる。
 だが、命を落とす確率も多い。

「安全なスリルというものはないのだ、と思うにつけ、
 渡り鳥になってみたいという、
 気持ちが膨らんでいくのが分かる。

「初めてうずまきの中に船を漕ぎ出していった人が、
 その後渡り鳥になったというのも、
 うなずける話だな。

-----6月18日

「6月18日、今日はサボテンの日~。

「一昨年の今日、
 サボテンを食料源として使おう、という主張が、
 新聞ラジオに乗せられた。

「なんでも、サボテンはダイエットによいらしいな。
 しかしそのようにして、自分をごまかして、
 食べ慣れぬものに挑戦するのはどうか。

「ある程度の正直さを持って生きていかねば、
 人生はつまらんと、
 ひいおじいちゃんもさとしておった。

-----6月19日

「6月19日、今日は音声の日~。

「音というのは、空気の振動である。
 それゆえ、近いパターンを持つものが
 同時に発生した場合…

「それらは互いに干渉しあい、打ち消しあう。
 重低音が響くのは、
 自然には重低音が、あまり存在しないからなのだ。

-----6月20日

「6月20日、今日はマッハの日~。

「音速で飛ぶことのできる飛空機械を生み出した、
 マッハ氏の誕生日ですね。

「マッハ2と書かれていたら、
 それは動力、マッハさんが二人分と、
 いうことなのでございます。

-----6月21日

「今日は6月21日、バトルアックスの日~。

「うっかりバトルアックスと結婚した青年がいて、
 人生が二度あれば、と願ったという。

「それがどう曲解されて伝わったのか、後世では、
 バトルアックスとは俗語(スラング)で
 『がみがみうるさい女』ってことになった。

-----6月22日

「6月22日、今日は磁石の日~。

「ものすごくマッサージの上手い人間(ひと)がいた。
 彼は魔法の指をもつ男、と崇められていたが
 実は単に、磁石人間であるだけだったのだ。

「だが、磁石にしては珍しく
 性格も穏やかな人だったので、
 それを指摘する無粋な奴は現れなかった。

「磁石も愛敬ということか。

-----6月23日

「今日は6月23日、ロープの日~。

「一流の船乗りになるには、
 大変なことが多いらしい。
 砂の流れを読んだり、ロープの結び目を覚えたり。

「そういえば、【荒野の災厄娘】シリーズ3巻は、
 船乗りにしかほどけない
 ロープの結び目がうまく伏線に使われてたっけ…

-----6月24日

「今日は6月24日、夏至祭りの日~。

「夏の到来と共に思い出す、あの人の記憶…

「ザンショが厳しい残暑。
 夜景がヤケイにきれいだね…。
 …わたしのこころを揺さぶった数々の言葉。

-----6月25日

「今日は6月25日、
 かわいそうな アークティカ王の日~。

「へっぴり腰で命乞いをしても…
 覚えた芸を一生懸命披露しても…
 彼を捕えた魔族は、餌を与えませんでした。

「彼が絶命したのが、この日。
 今日は彼の魂をなぐさめるために、
 へっぴり腰で踊る日である。

-----6月26日

「6月26日、今日はびんぼうゆすりの日~。

「びんぼうゆすりを極めることによって、
 王まで上り詰めたというアークティカ王、
 ジュヌビエーヴ大帝をあがめ奉る日である。

-----6月27日

「今日は6月27日、オオクワガタの日~。

「名将バルトロメウはオオクワガタが好きで、
 オオクワガタの兵隊をつくったり、
 オオクワガタに寄せる短歌集を出したりした。

「その甲斐あってか、とあるピンチ時、
 彼を愛していたオオクワガタが銃弾の前に身を投げ、
 彼をかばって殉職した。

「今日はそんな、種族を超えた愛の日…

-----6月28日

「今日は6月28日、電子工作の日~。

「彼女はハンダの溶(とろ-)ける匂いが好きだから、
 電子工作を作る。

「そして彼女は、
 理想とするハンダの溶ける匂いを追っているうち、
 いつしか有名なエンジニアになったそうだ。

-----6月29日

「6月29日、今日は双子の日~。

「双子の片割れの考える事が、
 もう一方と同時にシンクロすることを考えると、
 この世で一番早い通信速度は双子であろう。

「この理論が確立され、
 テレパスメイジたちの会で、一大センセーションが
 巻き起こった日だな。

-----6月30日

「今日は6月30日、偵察兵の日~。

「偵察兵をおかずに出発しよう、
 そう言った軍司令官…

「出発間際、彼が部下の様子を見てみると、
 偵察兵がオカズにされそうに
 なっているのに気がついた。

「偵察兵を置かずに出発するはずだったのに、
 なんでこうなるのかな~と
 司令官はひどく肩を落としたという。

「とりあえず、
 そのような過ちが二度とないよう、
 今日という日が作られたのだな。


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