アーメンガード
-----5月1日
「今日は5月1日、濡れた布の日。
「雨の中に放置されている
濡れぞうきんのような気分というのは、
空しく悲しいことの象徴だな…
「他にもいろいろ、
生まれなくてよかったというものはあるな…
ちびた鉛筆とかガラスの破片とかな。
「しかしこれを、逆説的に考えてみると、
ガーディアンとかは我らみたいなフツーの人間に、
生まれてこなくてよかったと思っているかも知れぬ。
-----5月2日
「5月2日、今日は箱庭の日。
「わたしのおじいちゃんは箱庭を作るのが、
趣味だった。
「道具が可愛らしいので、
わたしも彼の箱庭はお気に入りだった。
「ある日、今度は何を入れるの?と聞いたら、
わしの庭を埋めるパーツの名前は、
全て【孤独】とか言われて、反応に困った。
-----5月3日
「5月3日、執事の日~。
「執事とは家に在り、
庶務をとりおこなってくれる、
便利なお人だ。
「しかも…
夜に眠れないときの役にも立つ。
「執事が1匹執事が2匹、執事が3匹…とな。
-----5月4日
「5月4日、今日はアンゴルモアの日~。
「まおうアンゴルモアは、
日々時代に取り残される自分を感じていた。
「それゆえ彼は一念発起し、
自分はポップでキャッチーだ、というイメージを
人に与えようとした。
「新しい音楽を聞いたり、
ナウでヤングなモンスターと酒を飲んだりもした。
しかし、その結果は…
-----5月5日
「5月5日、今日は子供の日~。
「物を買ってもらえたり、どっかに連れていかれたり、
子供はとにかく得をする一日だ。
「…昨日おかあさんが、お前はもうオトナだよね、
って言ったのは、今日何にもしてもらえない
伏線だったのかな…
-----5月6日
「5月6日、今日はバタークリームの日~。
「古びたバタークリームの毒々しい色は、
電波を吸い込んで
毒電波として放出している証だそうだ。
「質の悪いバタークリームを食べると、
胸焼けがするのもそのせいらしい。
「わたしはあの、
もったりした口触りが好きだから
ザンネンといえば残念だなぁ。
-----5月7日
「今日は5月7日、遺伝子の日~。
「自分が学んだことを、遺伝子に刻み込んで
次世代に送れれば便利なのにな…
そしたら記念日暗記を二世代に渡ってできるからな。
「それにほら、
明日やれることは、明日にしようって
よくいいますでしょう?
-----5月8日
「5月8日、今日は石畳の日~。
「わたしがまだ幼かった頃、この日を記念して
石畳の端っこで、思いっきりジャンプしたのだ。
「そしたら石畳が跳ね上がって、
わたしの顔にブチ当たった。
「そのままわたしは、
これがファーストチスとはついてないと思いながら、
押し倒されるように昏倒した。
-----5月9日
「5月9日、今日は銀の日~。
「銀色の夢を見ると、紫色の鏡の世界に
連れていかれるという伝承があるが…
紫色の鏡の世界とは、どんな世界なのだろう?
「ちょっぴり興味があるので、
できれば銀色の夢を見てみたいのだが、
わたしの見る夢はすべてオールカラーなのだ…
-----5月10日
「今日は5月10日、ガラスの日~。
「とある廃屋で、巨大な昆虫モンスターと出会い、
窓際に追いつめられた女渡り鳥ジェーン!
しかも、もう弾薬はない!
「追いつめられた彼女は、
苦し紛れにテーブルにあった小さなナイフで
破れた窓ガラスを引っかいた。
「その嫌らしい音は、
モンスターの鼓膜を散々に傷つけたという。
決してあきらめない心、それが一番大事なのだ。
-----5月11日
「今日は5月11日、海関の日~。
「今日は、ゴー!イイ!の日…
「即ち快感の日だったが、文化的でないとのことで
一昨年海関の日に改められた。
「行政はまったく、無粋なことをするものだな…
-----5月12日
「5月12日、今日はボーダーのシャツの日~。
「牛泥棒に入られた大牧場。
逃げる泥棒を柵越しに見ていた牧童が二人。
しかし二人に証言させたところ…
「牧童Aは『犯人は赤シャツ』といい、
牧童Bは『犯人は白シャツ』と主張した。
そして、どちらも一歩も譲らなかった。
「二人とも正直者で通っていたため、
村の人も首をひねったが
捕まった泥棒を見て、皆納得した。
「泥棒は赤と白のボーダーシャツを着ていたのだ。
だから牧童Aから見ると、白縞が柵に隠れて見えず、
牧童Bが見ると赤縞が柵に隠れていた、というわけ。
-----5月13日
「5月13日、今日は砂埃の日~。
「砂埃は、掃いても掃いても侵入してくる。
そのガッツを見習う日だ。
「というわけでわたしも今日は、
負けないくらいのガッツをもって、
砂埃を掃き出そうと思う。
-----5月14日
「5月14日、今日は災害の日~。
「紀元184年の今日、大カタストロフが起こった。
だからこの日は防災訓練と、
ありがたい村長のお言葉を聞く日なのだ。
「しかし年号早覚え
災害は184(いやよ)
というのは、なんとかならんかったのだろうか…
-----5月15日
「今日は5月15日、不死鳥(フェニックス)の日~。
「初めて熱気球を作ったときの動力は、
不死鳥だったそうだ。
「炎は煙と同じように空高く上りたがるから、
鳥+炎の不死鳥は揚力としては確かに最高だろう。
「それとはまったく!関係ないハナシなのだが、
今日は不死鳥が生まれかわる日なのだ。
-----5月16日
「今日は5月16日、占いの日~。
「占いだから裏がない…
というと君は思っただろう?
その表情からするにドンピシャリだな。
「人の心を読み相手の望む言葉を返すこと、
それが占い、と偉い人が言ったため、
今日は占いの日なのである。
-----5月17日
「5月17日、今日は人ごみの日~。
「上空から見ると、ひとがゴミのように見えるから
人ごみだと思っていたが、
込んでいるから人ごみなのだな…
「しかし、いきなり『ゴミ』と出てくる
自分の思考回路もかなりなんだといわざるを
得ないものではあるな。
「この否定否定肯定という、うじゃけた言い方に、
わたしのとまどいを感じてほしい…
-----5月18日
「今日は5月18日、緑の日~。
「緑の目を持つ少女がいた。
彼女の特技は、瞳で光合成ができること。
「しかし瞳で光合成が出来ても、
酸素の送り先は肺に繋がっていないため、
涙がシャボン玉みたいに溢れるだけだったそうだ。
*「彼女」のルビが「かんじょ」になっている
-----5月19日
「今日は5月19日、レコードの日~。
「レコードの回転数を、微妙にちょっぴり上げると、
異世界からのスクラッチが
入ってくるという噂。
「それをキャッチしたものは最強のタンプリンとなり、
缶プリンを食べてアン・プーリンを倒すことが
できるってのはウソ臭いけれど。
-----5月20日
「5月20日、今日は集合住宅の日~。
「集合住宅には大変なことが多いな。
ゴミ出し一つにせよ、様々な作法が存在する。
「それらを厳粛な気持ちで受け止め、
心を新たにルールを守る決意をする…
管理社会の到来は、すぐそこにある気になる日だな。
-----5月21日
「今日は5月21日、宗教の日~。
「宗教の日なのがいけないのだろうか、
いや、今日の出来事なのだが…
「明け方金縛りにあり、
なんとか振りほどこうとラジオをつけたら、
運命の箱船教団のCMが流れてきたのだ。
「なんだかとても、怖い体験であった…
クワバラクワバラ。
-----5月22日
「今日は5月22日、探偵の日~。
「探偵の日である今日は
偉大な探偵を生み出した、小説家の誕生日だ。
だが、何かが違うと思うのはわたしだけだろうか?
「そう、この記念日の作り方は間違いだろう。
記念日に詳しいわたしが言うのだ、間違いない。
-----5月23日
「今日は5月23日、文通の日~。
「というわけで文通をしていたが、
その日その日の記念日を教えてあげてたら
いつのまにやら音信不通に…
「しかし記念日に興味のない男の子になど、
わたしだって興味がない。
「そうだ、よくわたしに話しかけてくれる君たちは
記念日に興味があるのだな?
よければわたしと文通せぬか?
-----5月24日
「今日は5月24日、古の日。
「古きガーディアンたちに、
バスカーの人たちが供物を捧げる日だ。
それゆえ今日はバスカーに足を向けてはならぬ。
「ところで、バスカーの人たちは古の言葉で喋るらしいな。
死後だけでなく、死語の世界にも
通じているというわけか…
-----5月25日
「今日は5月25日、白い鳩の日~。
「わたしは鳩が、大好きだ。
見るのも、飼うのも、食べるのも…
いわばわたしの心の三冠王である。
-----5月26日
「5月26日、今日は栓抜きの日~。
「我が家の栓抜きは、わたしの歯だ。
それゆえ、今日は歯を剥き出して歩くことにした。
決してあなたを威嚇しているわけではないのである。
-----5月27日
「5月27日、今日はギャンブルの日~。
「むかしむかし、ギャン・ブルという名前の
おじさんがいたんだそうだ。
「その人は移民の船に乗ってきた人の気質を
象徴したというか、最大公約数にしたというか…な
人だったそうだ。
「煙たがられたり愛されたりしてたそのおじさんは、
キャラグッズまで出されたりもしたので
彼の死んだ日である今日は、ギャンブルの日なのだ。
-----5月28日
「5月28日、今日は魔性の日~。
「そういえば、うちのおかあさんも
ましょうの女(ひと)だ。
「いつもいつも、『しましょう』とうるさいのだ。
やれ『歯を磨きましょう』
やれ『お風呂に入りましょう』などと…
「しかし魔性の人は長生きするらしいので、
ありがたいことでありますな。
-----5月29日
「5月29日、今日は学者の日~。
「記念日学者としては、わたしも一流だ。
なぜならば、この分野を専門に研究している人間は、
わたししかいないからな。
「七人委員会からスカウトが来たりしたら
どうしようというのが、
目下の悩みだったりする。
-----5月30日
「5月30日、今日は薔薇の日~。
「今日、薔薇の花びらをお風呂に浮かべて入ると、
一年健康ですごせるんだって。
「でもお風呂に薔薇の花びらを浮かべて悦ぶなんて、
ガンナーズヘブンのペグッチ伯爵みたいで
カッコ悪いかもしれません。
-----5月31日
「5月31日、今日は風ネズミの日~。
「ネズミと共に旅をしていた渡り鳥がいた。
ある時彼は、ダンジョンの奥深くで、
トラップにはまって帰れなくなってしまった。
「お腹が空いてしょうがない渡り鳥のため
ネズミは自分の身を炎に投げ、焼肉を作った。
その匂いはジョリーロジャー特産はんぺんさながら。
「美しい話だが、この話には
ネズミが渡り鳥を『たまには役に立て』と
炎の中に突き落としたという異説もあるのだ。
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